MJの曲をめぐる論争において、言論の自由はソニーを守らない:裁判所裁定

今から10年以上前、亡くなった翌年の2010年に発売されたアルバム「Michael」で、一部の曲をマイケル・ジャクソンが歌っていないという疑惑が浮上した。カリフォルニア上級裁判所は木曜日(8/18)、芸能広告に関する新たな判例となる裁定を提案した。

州の最高裁である上級裁判所が審理したこの問題では広告における言論の自由と消費者保護のバランスの議論となったが、裁判所は消費者の側に立ったのである。

この裁定では、「Michael」に収録された楽曲は本物だとするソニー・ミュージック・エンタテイメントの広告はコマーシャル・スピーチ(商業的言論)であり、故に、消費者保護諸法に従うものであると判断された。

同時に、本物であるとアルバム背面やプロモーション・ビデオで展開した主張は、公共の利益の問題に関する言説が煩雑で高額な訴訟の問題とならないよう保護するべく設計された言論の自由の法の下においてはそもそも消費者訴訟の対象とならないとするソニーの主張は棄却された。

下級審の控訴裁判所の決定を覆す本裁定は、音楽やその他のアート作品の広告に対する重要なチェック機能として、そして芸術作品の売り手により騙されるべきではない一般消費者のための常識の勝利として、消費者保護団体の支持を受けたものである。

「このようなタイプの裁判で危険なのは、裁判所とういうものは、問題となっている作品の芸術的性質に引っ張られ、消費者保護よりも修正第一条と芸術的表現に対する懸念を優先しかねないということです」と語るのは"Berkeley Center for Consumer Law & Economic Justice"の理事、テッド・マーミンだ。「しかし常識のレベルでは、マイケル・ジャクソンの曲として販売されているアルバムを買う場合、マイケル・ジャクソンの曲が収録されていなければなりません」。

数年に及ぶ法廷闘争は、10曲入りアルバム(うち9曲はキング・オブ・ポップの未発表音源と宣伝された)「Michael」が発売された直後に始まった。ジャクソンはその前年の2009年に亡くなっている。

噂はすぐに広まった。収録曲のうち、カシオ・トラックとして知られる3曲(噂によれば、ジャクソンの友人であったエドワード・カシオの自宅スタジオでレコーディングされた)はインパーソネーターが歌っているというものだ。

ソニーはそうした主張を否定し、これらの楽曲が本物であるという「完璧な証拠」があると述べた。しかしファンでありアルバム購入者であるヴェラ・セローヴァという人物は納得せず訴訟を起こした。

木曜日に出された上級裁判所の7人の判事の全員一致の意見の中でマーティン・ジェンキンス判事は、このアルバムの広告は2つのカリフォルニア州消費者保護法に違反しているとのセローヴァの主張には考慮すべき点があり、ソニーの言う言論の自由論をもとにして棄却することはできないと書いている。「おそらく別の状況では、修正第一条は消費者保護諸法を制限するが、ソニーのアルバム背面の文言やビデオは製品についてのアピールを行う商業広告であり、裁判所はこうしたものを州の規制の外に置くことことはない」とジェンキンスは記している。

本決定はセローヴァにとってほんの数週間前の時点ほど重要ではないかもしれない。セローヴァはソニーとマイケル・ジャクソン・エステートと示談(内容は非公表)に応じている。しかし、法律関係者によれば、カリフォルニアの消費者と芸能関係者にとっては重要だという。なぜなら、世界の音楽や映画、テレビ番組の大半が制作されているカリフォルニアの最上位の裁判所によって言い渡された判例だからだ。

ジェンキンス判事は、示談が成立し下級審に差し戻されても棄却される可能性が高いにもかかわらずなぜ裁判所が意見を述べたかについて説明する中で、本訴訟の根本的問題の重要性を記している。

ソニーの広報担当は本裁定についてのコメント要請に対して返答していない。エステートの広報はコメントを拒否している。

 先週、ソニーとエステートは共同声明を発表し、セローヴァとの示談を発表した。ソニーとエステートは「訴訟を終わらせることで双方が合意しました。上訴等、長期となる裁判はこれ以上は行われることはありません」と述べている。

また、問題となった楽曲「Breaking News」、「Monster」、「Keep Your Head Up」は音楽プラットフォームから削除すること、これが「これらの楽曲に関する論争を完全に解決するための最も容易にして最善の方法」であるということも書かれている。

一方で、誰がこの3曲を歌っているのかということをめぐる論争は依然として残っている。ただし、議論の目的上、これらの楽曲はジャクソンによって歌われていないということを法廷内では前提とすることに訴訟当事者間では合意していた。

セローヴァの代理人のデニス・モスとジェレミー・ボリンジャーは木曜日、裁判におけるすべての申し立て(アルバム制作に関係した他の当事者らに対するものも含め)がソニーとエステートとの示談に基づいて棄却されることを期待していると述べた。

また、今回の裁定を評価して、セローヴァだけではなく音楽とアートを購入するす消費者にとっての勝利であると述べた。

下級審では、ソニーが打った同アルバムの広告は「単にアルバムの販売促進だけでなく、論争となっている一般の関心(ジャクソンがこれらの曲を歌っいるのかどうか、それゆえ、保護される言論なのかどうか)に対する立場についても述べていた」との判断を示していた。

もしこの裁定が維持されていたら、音楽の広告主をつけ上がらせて誇張を許し、「消費者保護諸法にとって危険な先例となっていたでしょう」(ボリンジャー)。

ボリンジャーによれば、上級裁判所は、間違った広告の張本人がその言説が間違っていることに気づいていないというようなケースも含めアートを買う消費者の保護について再確認を行ったのだという。ソニーは、カシオ・トラックがジャクソンによって歌われていないことを知らなかった、その反対を信じていたのだと主張してきた。

「この決定は、製品に関する謳い文句の正確さについて売り手が個人的に知識があるかどうかは問題とならないということを確認するものです。もし何かを売ろうとするなら、それをどう表現するかについて責任があるということです」(ボリンジャー)。

ジェンキンスは、虚偽の広告であるとの訴えに対し製品が本物であるかどうか知らなかったということが合法的な防衛策となるのであれば、売り手は自身の製品についてできるだけ知らないでおこうという動機を与えられるだろうと指摘し、上級裁の意見におけるこの基準について賛同した。

「商品に関して主張をしている売り手は、虚偽広告規制に触れないようにするということは絶対にないし、あるいは、その主張を非商業目的として扱わせようとします。その主張が検証されること、あるい調べられることを巧妙に拒否するのです。知識のテストは虚偽広告法を弱体化し、見て見ぬふりに褒賞を与えるのです」(ジェンキンス)

Berkeley centerのマーミンは法廷助言書を共同で書いており、ソニーによる同アルバムの広告はまさに商業広告だと主張している。マーミンは今回の裁定に満足していると述べ、消費者保護と芸術的自由に維持の間の正しいバランスだと評した。

マーミンによれば、裁判前の一つの主要な問題は、ソニーがカリフォルニアの強力な「アンチスラップ」法を盾にして自らを守ろうとしていたことだという。裁判所はそれを正当に拒絶したとマーミンは言う。

スラップとは「市民参加を妨げる戦略的訴訟」である。こうした訴訟は健全な法的理由ではなく、戦略的な目的がある。弁論の時間を奪い、あるいは高額の訴訟費用を強いることによって訴訟相手を黙らせるのである。

カリフォルニア州のアンチスラップ法は、大法人が、自身や自身の製品に対する一般からの批判を封じる目的で訴訟を使うことを防ぐように作られている。マーミンによれば、本件ではソニーはこの法を逆手に取ろうとしていたいう。弱者である消費者を守るための法律を使って法的な責任を逃れようとしたのだ。

マーミンによれば、裁判所は、法廷で提示された事実のみに基づき、ソニーのアンチスラップ議論をかろうじて退ける決定を下した。結果として企業による法の悪用の新たな先例を作らなかったのである。

そして、この判例は、カリフォルニア州のアンチスラップ法はアート商品の広告において消費者を誤解させることを許さないこと企業に知らしめたとマーミンは言う。

「事実として、ここに線引きをするということは、少なくとも芸能界に関しては大変重要なのです」。

Source: LA times
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