プリンスとマイケル その対抗意識と革命(その3)

メディアはしばしば、どちらかの肩入れをしたくなる衝動にかられた。「ブルース・スプリングスティーンはポップ・ミュージック界で最も情熱的パフォーマーかもしれない。プリンスは最も挑発的、デヴィッド・ボウイは最も演劇的だ。だが、マイケル・ジャクソンはこの分野で最も素晴らしいエンタテイナーだ」とミネアポリス・スター・トリビューンのジョン・ブリームが書けば、ニューヨーク・タイムズのジョン・パレルズは反論している。「ミスター・ジャクソンがオーディエンスの承認を得んがためだけに自分の努力を引き換えにすることを欲している一方で、プリンスのショーは喜びに満ちた危険な自由の中で意気揚々だ」。今日に至るまで、議論は激しさを増している。曰く、プリンスは楽器ができる、ジャクソンは素晴らしいショートフィルムを作った。プリンスは優れた作詞家、ジャクソンは優れたボーカリスト。プリンスは多作、ジャクソンは辛抱強い完璧主義者。プリンスは長く愛される、ジャクソンは文化に与えたインパクトが強烈だった、等々である。

ライバル論争(ストーンズvsビートルズ、ニルバーナvsパール・ジャム、ジャネットvsマドンナ、ガガvsビヨンセなど)のご多分にもれず、落ち着く先は結局は主観であり、個人的な理由に帰着しがちである。クインシー・ジョーンズは、音楽評論家やジャーナリストたちは2人の類まれなる才能や創造的視点をそれぞれ認めるというよりはジャクソンを貶めるためにプリンスを使っていると感じていた。さらに言えば、優劣や対立に固執するメディアのために、彼らが協力して成し得たことがしばしば覆い隠されてしまった。

ジャクソンとプリンスはお互いに押したり挑んだりしただけではない。彼らは後に続く幾多のアーティストやエンタテイナーたちのためにドアを開け、スタンダードを築いた。2人のアフリカ系アメリカ人のアーティストが遥か成層圏にまで到達したことなどいまだかつてないことであり、ラジオやテレビ、映画の世界にはびこっていた人種のバリアを打ち砕いたのである。2人は類まれなる多次元のアーティストであった。自分自身で曲を書き、映画を製作し、パフォーマンスのコンセプトを考え出した。人間の感情と経験をすべてカバーする広大で多様な楽曲群を生み出した。その象徴的なスタイル、サウンド、そしてイメージでアメリカの(そして世界の)文化のDNAに深く記憶された。他人と自分との伝統的境界に挑み、破壊した。アルバム、映画、そしてワールドツアーでそれまでの記録を破った。

80年代だけで、2人は合わせて30のトップ10ヒットを放ち、そのうち13曲はトップに到達している。82年から84年にかけて、ジャクソンの「Thriller」は通産37週トップに君臨した。史上最も売れたアルバムでありつづけるだろうし、ミュージック・ビデオはMTVに革命を起こし、メディアの可能性を押し広げた。一方、プリンスの「Purple Rain」は1984年8月から1985年1月まで24週トップに立った。史上4番目の在位期間記録である。プリンスは、ビートルズ以来のアルバム、シングル、映画の同時1位を達成したアーティストだ。

どちらも、単なる商業的成功では満足しなかった。彼らの帝国は、彼らの創造的野心を守り、耕し、そして前進させるために生み出されたのだ。彼らは、自分自身をエンタテイナーをはるかに超えていると見ていた・・・彼らには伝えたいことがあり、そしてあらゆる手段を、それを意のままに表現するために使った。

キング・オブ・ポップとヒズ・ロイヤル・バッドネスは最後まで競っていた。2009年、ジャクソンがロンドン・O2アリーナでの大復活に向けて準備を行っている時、伝えられるところでは、彼はプリンスが2007年に記録した21公演35万人に勝つべく50公演を万全にしようとしていた。後によく知られるようになったが彼は不眠であった。ジャクソンはツアー監督のケニー・オルテガに、アイディアに興奮してしまって「頭から消せない」と語っていた。オルテガは、ツアーが始まるまでアイディアは保留にしておいたらどうかと言ったが、ジャクソンは、「分かってないな。そのアイディアを僕が受け取らなかったら、神はそれをプリンスに与えてしまうんだよ」と答えたという。

ひらめきが来ない場合でも準備を整え受け入れ状態でいることについてジャクソンが言わんとしていることを、他の誰よりもプリンスは理解していた。ジャクソンと同様、プリンスも常に「チャネリング」状態で、消し去ることがなかなかできなかった。レコーディング「中毒」なのかとローリンス・ストーン誌に尋ねられたプリンスは、頭の中にあるものを「ダウンロード」する脅迫的必要に迫られているように感じているのだと答えている。「全部そこにあるんだ。全部を今すぐでも聴くことができるよ。今すぐ頭の中の5枚のアルバムを聴くことができるんだよ」と彼は説明している。

マイケル・ジャクソンは2009年の6月25日に亡くなった。『Purple Rain』発売からちょうど25年だ。その大量アクセスによって有名なニュースサイトの中には一時的にフリーズ、あるいはクラッシュするところがあった。ジャクソンの葬儀は10億人が見たとされる。視聴者数という点から比較しうるのはダイアナ妃の葬儀くらいである。プリンスは公式には声明を出さなかったが、複数の証言によれば、強いショックを受けていたという。作家でトーク番組の司会者でもあるタビス・スマイリーは、「自分の死とマイケル・ジャクソンを失ったことが自分にとってどのような意味をもつのかということについて数時間」、プリンスと話していたことを覚えているという。10月にフランスで行われたインタビューでジャクソンの死について尋ねられたプリンスは、「愛している人を失うと言うことはいつだって悲しいことだ」とだけ答えている。その後のツアーでプリンスはジャクソンの「Don't Stop 'Til You Get Enough」をしばしばカバーしていた。2014年後のローリンス・ストーン誌のインタビューでは、ジャクソンの死について彼が感じていることを聞かれ、「それについては話したくないんだ。近すぎるんでね」と拒んでいる。

後にわかったことだが、プリンスは思っていた以上にジャクソンに近かった。ジャクソンと同様、彼の生涯は、再興のさなかに悲劇的に絶たれてしまった。2016年4月26日。プリンスはペイズリー・パークのエレベーターの中で意識不明の状態で発見された。数時間後に死亡が確認された。そのニュースはすぐに広まった。ジャクソンと同様に、全世界の反応は非常に大規模だった。世界のモニュメントはパープルにライトアップされ、SNSは思い出話や追悼であふれた。オバマ大統領は「私たちの時代の最も才能ある最も多作なミュージシャンだった・・・楽器演奏の巨匠、卓越したバンドリーダー、しびれるパフォーマーだった」と彼を称えた。

プリンスの死をうけて、ジャーナリストの中にはプリンスとジャクソンの間にあった悪意あるうわさを蒸し返し、彼らの競争を取るに足らないセレブの確執に矮小化するものもいた。真実はセンセーショナルでもなんでもない。マイケル・ジャクソンとプリンスはお互いを尊敬していた。そう、彼らはライバルであった。彼らはベスト・フレンドではなかった。しかし、同じアフリカ系アメリカ人として、先駆者として、アーティストとして、彼らはお互いの奮闘や偉業を認め合っていたのだ。結局、彼らは同じような道のりを歩んでいたのである。

世界を変えうるのは一握りのアーティストのみである。マイケル・ジャクソンとプリンスはその内の二人だ。うまくいけば、二人は1986年の「Bad」で、あるいはそのほかのすばらしいプロジェクトでコラボレーションしていただろう。だが実際は、彼らは80年代、90年代と火花を散らして併走し、一つの時代の最重要アーティストとなった。

今日のポップ・ミュージックの世界は彼らの革命の影の中に存在しているのである。

著者:ジョー・ボーゲル
メリマック・カレッジ助教。著書「 Man in the Music: The Creative Life and Work of Michael Jackson」(2011年)が高評価を受けた。論文「Witnessing the Reagan Era: James Baldwin and the 1980s」を近く発表予定。The Atlantic、Slate、The Huffington Post、PopMatters、the F. Scott Fitzgerald Review、The Journal of Popular Culture、the Journal of Popular Music Studies、Scribner’s Dictionary of American History等に寄稿。PhD(ロチェスター大学)。

(おわり)

Source:popmatters.com
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